全大教資料 No.02-15

2003718日 単組執行部討議資料

 

全大教、単組の今後の組織・財政について

全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 

 

1.職場の過半数を組織する組合づくりの意義と視点

 

  このことについて、全大教第24回定期大会(20017月)および第26回定期大会(20027月)において以下の決定を行っている。

 (1) 全大教第24回定期大会で決定した「組織強化3カ年計画」

  @ 国立大学等の法人化、公務員制度の抜本的改革の動向等、新しい状況をふまえ「労働関係の質的変化」に対応する教職員組合の建設という課題が、全大教、各単組にとって避けて通れない重要課題となっている。

  A 「労働関係の質的変化」の内容は、現在の人事院勧告体制、勤務条件法定主義の環境から労働協約、就業規則の環境に変わることにより、大学当局の裁量権限が拡大され、労働組合も争議権、団体交渉権、労働協約締結権をもつようになるなど、その役割と権限も格段に引き上げられる。また、就業規則の作成、変更の過程や労使協定の作成等に際して、「労働者の過半数を組織する労働組合」及び「労働者の過半数を代表する者」を必要とする制度がくり込まれている。

  B このことは、労働組合がその活動において「過半数の教職員の意見集約・合意をとりつける」という視点が常に必要になることを意味し、そのためには、労働組合が「当事者能力」をもつこと、すなわち、大学当局に対して「問題点の指摘」をするだけでなく、具体的な対案を示すことが課題になる。また、教員、事務職員、技術職員、医療従事職員等多様な職種間の合意を得ることの重要性が従前以上に増してくるものと思われる。そのためにも、事務職員の位置づけと組織化は避けて通れない重要課題となっている。

 (2) 全大教第26回定期大会決定

  @ 「労働関係の質的変化」に対応しうる組合の当事者能力と交渉力量を高め、職場における過半数の教職員の組織化をめざす。

  A そのためには、組合が主体的力量の向上という立場から、従来の組合活動を見直すことが求められている(教職員の多数の支持を得る説得力のある要求への練り上げ等)。

 

2.全大教、単組、地区協議会の役割及び強化のための課題

 

 (1) 法人化された場合の全大教の機能と役割

  @ 現在の全大教の主な機能は、人事院や文部科学省等との交渉、全国的な運動の方針提起と交流、問題分析と政策提起・情報提供等である。法人化によってもその機能は維持されるが、変化することが予想されるのは交渉機能である。

  A  現在は、全大教に対応する交渉対象として文部科学省があり、国公法上の制約はあるが交渉権がある。

    法人化後は、文部科学省自体は大学教職員について「任命権」があるわけではない。しかし、運営費交付金の配分権、中期目標を定める権限、中期計画の認可や法人の長の任命権等大学等に対する関与は強く残されている。また、総合的な大学・高等教育政策は今後も文部科学省が策定することとされている。

従って、文部科学省との新たな会見機能の充実が必要である。また、法人化に伴い、新たに総務省、財務省、厚生労働省との交渉・会見が重要となる。

  B 国立大学協会は「国大協のあり方特別委員会」を設置し、法人化後の同協会の機能について検討中であるが、どのような結論が出されても、全大教にとって大学法人の全国共通の課題に関する交渉や政策協議の対象となる。その範囲等は今後の展開や仕組みにもよるが、すでに、「定期懇談」の場が公式に設定されており、具体的な話し合いが開始されているところである。全大教と「国立高専機構本部」との交渉機能や公立大学協会との会見機能も重要となる。

  C さらに、単組との関係においても、全大教と大学法人との対角線交渉、全大教役員の単組交渉への参加、未組織大学における教職員の組織化などが全国的に組織された労働組合の当然の任務となる。

  D 以上のことから、全大教の役割は、現在以上に重要になるものと考えられる。

 

 (2) 全大教地区協議会の役割

  @ 法人化された場合、人事交流、採用試験等がブロック(地区)レベルで実施・調整されることが考えられており、全大教地区協議会の役割が重要となる。

  A したがって、地区協議会としての情報交流活動の強化が求められる。地区協議会の機能等をどのように強化すべきかについて、具体的な検討が必要になる。

 

 (3) 高専における組織の強化

  @ 国立高専の独立行政法人化に当たっては、55高専を一つの機構として運営することとしている。独法化後の高専における労使関係は、「独立行政法人高専機構」と「全大教」との交渉及び各高専における労使交渉によることになる。

  A 機構と各高専の役割・機能等不明な点もあるが、全大教における高専協議会の機能強化とそのあり方の検討及び55高専での組合員拡大、組織強化(未組織高専における組合づくりが急務)と全大教との高専単組の連携強化が緊急の課題となっている。

  B そのために、未組織高専教職員との「つながり」に基づく活動、ダイレクトメール等による働きかけ等特別の手だてが必要である。

 

(4) 単組の役割

  @ 法人化後の国立大学等における賃金、労働条件等は、労使が自主的に決定することになり、法人と労働組合の関係は質的に変化することになる。また、団結権、団体交渉権、争議権が付与されることになり、単組の役割・機能も従前と比較できないほど増大する。

  A 単組は、国家公務員法における「職員団体」から名実ともに「労働組合」となる。そのことから、組合内部の意思形成や権限配分等について規約改正も含めた対応も必要となる。

  B 単組の役割・機能が大きく増大することから、それに見合った単組体制が必要になることを意味する。具体的には、交渉機能が飛躍的に増大することから、それに対応でき、教職員の要求を正確に結集しうる執行体制の強化が急務になり、そのためには、専従者の配置を含めた強化が求められる。

 

 (5) その他

  @ 法人化後は、「任期制」の無限定な導入とも関わって、不当解雇等いわゆる「労使紛争」が起こることが予想され、また、組合会計を含めた「財務・会計」面の対応が大きくなるものと考えられる。このことから、「顧問弁護士」「公認会計士」等の整備・充実が必要となるものと考えられる。当面の課題として、現行の体制で可能なのかどうか等の検討も必要になる。

 

3.過半数の教職員を組織する組合をつくる展望と留意点

 

 (1) 過半数の教職員を組織するための課題と展望

  @ 客観的には、「労働関係の質的変化」によって労働組合の役割が飛躍的に大きくなること。さらに、就業規則の作成、変更の過程や労使協定の作成等にあたって「過半数を組織する労働組合(又は、代表する者)」を必要とする制度が存在する。従って、「過半数を組織する組合づくり」の条件は大いにある。

  A しかし、自動的に「過半数組合」になることではなく、いくつかの課題をクリアすることによってその実現が可能となる。

    その点で重要なことは、「過半数の組合づくり」のためは、少なくとも「過半数の教職員の合意をとりつける」ことが必要になり、「過半数の教職員の意見集約」に常に心がけ、そのことを可能にする組合づくりが求められる。

  B そのためには、「少数者の意見に基づく運動」から「多数者の利益と意見集約」という発想の転換がどうしても必要となる。

  C 「教職員組合が過半数」になるとどうなるのか、教職員個々の利益との関係で示すことも必要であろう。また、「不利益処分」等の従前は公務員としての守られてきたことが、その保障がなくなり、「労使交渉」によってのみ解決が可能となるなどの、労働組合の役割が質的に変化すること等を具体的に示し加入を訴える活動が重要になる。

 

(2) 過半数の教職員を組織するうえでの留意点

 @ 過半数の教職員を組織するうえで、階層では青年層、職種では事務職員の組織化が不可欠の課題となる。全大教では、青年部を中心にした「青年交流集会」等のとりくみやこの間の青年層の組織化のために地区協議会、単組との懇談等の活動を重視してきたが、後者の場合必ずしも、成功していない。青年層の組織化のためには、今後もこうした活動が重要になる。事務職員問題についても「事務組織、事務職員のあり方」等について分析・議論してきた。また、いくつかの単組では、未加入の事務職員から「組合づくり」「組合加入」の相談が寄せられている。

 A 未組合員からの「相談内容」の特徴的なものは、「法人化によって、組合が必要なこと、自分も加入する必要があることは理解できるが、現在の教職員組合に加入することには抵抗がある。教職員組合は法人化後にどのような労働組合をつくろうとしているのか知りたい」というものである。法人化後の「労働関係の質的変化」の中で、すべての職種を包含した「どのような労働組合づくり」をめざしているのかを示すことは避けてとおれない課題となっている。

 

4.全大教における役員、書記の体制強化・確立

 

 (1) 役員体制の強化

  @ 「法人化」という、大学等教職員組合運動史上未曾有ともいえる厳しい状況を、運動・政策・組織強化で打開し、その役割がより増大する全大教運動を担う役員体制の確立は緊急かつ不可欠の課題である。

  A なかでも、専従役員の体制確立と強化が緊急の課題となっている。具体的には、本部常駐役員を現行の3名から、少なくとも5名の体制にすることが急務である。中期的には、10名程度の専任役員を配置することが必要であると考える。

  B 専従役員については、「職場の組合員」から確保することが基本である。そのことを追求しつつも、専従役員の確保を第一義的に考え、必要な場合は「外部からの登用」も考慮する必要がある。

 

(2) 全大教書記について

  @ 現状は、3名の書記(専任)と日々雇用職員1名(高等教育研究会事務局)、アルバイト1名で業務を行っている。

  A 当面、現在の体制維持・強化が必要である。

 

5.全大教及び単組財政の確立

 

 (1) 全大教財政について

  @ 現行の全大教組合費は一人1ヶ月1,250円で、国立の場合は組合員の9割、公立の場合は8割登録としている。

  A 「法人化」された場合の全大教の役割から見て、少なくとも現行組合費を維持することは最低限必要である。各単組は、単組の財政確立に努力しつつ、国立9割、公立8割登録を遵守することが求められる。

  B 以上のことを原則としつつ、一方では単組の組合員拡大のとりくみにも配慮した措置も必要と考える。例えば、今後の純増組合員(組合員の9割登録単組が前提、公立大は8割)については、一定期間、特例措置をとること等も検討が必要である。

 

 (2) 単組財政の確立

  @ 単組における組合費は、単組の歴史的な事情もあって、高いところでは月1万円近いところから千円程度のところまであり、多様である。

  A 「法人化」された場合を想定すると、先にもふれたように「勤務条件法定主義」から「労使で決定する」システムに質的に変化し、労働組合の役割が飛躍的に増大する。このことは、組合員個々にとっても労働組合との関わりが大きくなることとなり、現行以上に労働組合に対する期待、関心、要求が強くなるものと思われる。

  B 増大する労働組合の役割から見て、単組の組合費は、少なくとも一人月平均4,000円程度を確保することが必要になり、他の労働組合の状況等と比較しても組合員の了解は得られるものと考える。労働組合の役割、組合費の使い道等を具体的に示しつつ、全大教・単組財政の確立に努めなければならない。